サクリ過去小説2

―二度目に目覚めた時は、何もない 暗い暗い部屋に居た―

 

 


「う・・・・・・・」

 

 

小さく呻きながら薄目を開けると、何もかもやたらと大きい暗い部屋で、
 

 

高すぎる天井の窓からわずかに差す光だけが光源のようだった。

 

そしてどうやら自分は床に横たわってるらしく、骨伝導でかすかに遠くの戦いの音が聞こえる。
 

外で何が起こってるのだろうかと身体を起こすと、そこで初めて厚手のローブを着せられている事が分かった。

 

「これは・・・」
 

 

「・・・目が覚めたかい?]

 

 

「!マスター・・・・・!? マスター!!」
 

 

 

声のする方を振り返ると、体や顔のあちこちにヒビが入り 血まみれのマスターがいた。
 

右手には紫の・・・アメジストというには暗すぎる宝石を携え、とても悲しそうな顔をしていた。
 

 

それでも白マルスを安心させようと疲れた顔でにこりと笑うと、少しおどけて
 

 

「ヒビまでお揃いになっちゃったね。」
 

と言った。
 

「そんな事言ってる場合じゃないでしょう!!一体――」
 

 

喋りかけた白マルスの唇に笑いながら人差し指を当てると、真顔に戻ってこう切り出した。

 

 

 

「今から・・・キミに伝える事が3つあって・・・それを聞いた後にキミに決断してほしいんだ・・・」

 

 

「・・・はい。」
 

白マルスは心配と緊張が入り交じった表情で頷く。

 

 

 

しばらく間を置いて、マスターは口を開いた。

 

 

 

「まず1つ。・・・・キミをフィギュアに戻した後調べたんだけど・・・このまま動いてるとキミは、
 

 

 

 

 ・・・あと数刻と待たず砕け散るんだ・・・・」
 

「そうですか・・・」
 

 

1つめからいきなりの死亡宣告だったがあまり驚いてない体を装った。
 

また、痛みは無くなったが、さっきから耳の奧や肩で時々ひび割れる音がするので嘘だとも思わない。
 

きっと私が生まれた時にマスターが不思議そうな顔をした答えがこれなのだろうと思った。
 

 

「そんな事よりご自分の心配をして下さい」
 

と言いたかったが、マスターが二つめの事を言おうとしてるのでとりあえず胸にしまっておく。

 


 

 

 

「・・・そしてその頃、丁度私の造ったこの世界も終わる・・・これのせいでね・・・」
 

悔しそうに握りしめた宝石から、かすかに鼓動が聞こえた気がした。
 

「なっ・・・何故ですか!!」
 

驚いて叫ぶ白マルスを見たマスターは苦笑すると、説明した。

 

 

要約すると、
 

 

タブーという人物が「フィギュアを破壊するフィギュア」魔竜を造り、それを使い戦争を仕掛けてきて
 

マスターがそれをとっさにフィギュアに戻して一時的にこの宝石に造り変えたが、それで力をほとんど使ってしまい
 

戦いが始まってしまった。更に宝石ももうすぐもとのフィギュアに戻ってしまうのだという。

 

 

「それを壊すことはできないのでしょうか・・・?」
 

 

「・・・無理だよ・・・壊す力を私は持ってないし、造り替えたと言っても大きな力のものを小さな力のものに造り替えることはできないんだ・・・」
 

 

マスターはまるで子供のように床に座り込んでうずくまってしまった。
 

 

 

 

そのまま長い沈黙が流れる。

 

 

 

「マスター・・・3つ目は、何ですか?」
 

 

ふいに白マルスが尋ねた。世界が終わるより悪い話など、あるものか。

 

 

するとマスターは、意外なことを口にした。

 

「・・・キミがこのフィギュアの入れ物になれば・・・世界は救われ、キミはほぼ永遠に生き続ける・・・」
 

「!!」
 

白マルスは言葉を失った。
 

 

「ただ、二つ問題があるんだ・・・強大な力の入れ物となる体に
 

 心が耐えられずに壊れることと・・・暴走するきっかけを除くため、

 

 

 キミを永遠にここに幽閉すること・・・」
 

 

 

それを聞いて、初めてこの部屋を恐ろしいと思った。
 

 

壁も、床も、空気も、光でさえ静止したように一定で暗く冷たい。
 

 

先ほどまでかすかにしていた戦いの音もぴたりと止んでいる。
 

 

 

 

「心が壊れると・・・どうなるのですか?」
 

「何も感じなくなって 呼びかけにもほとんど反応を示さなくなる。」
 

「私を幽閉したら・・・マスターはどうなるのですか?」
 

 

「消えてなくなるよ。」
 

 

そこで白マルスは目に見えて悲しい顔になったのでマスターは
 

「・・・今の時点でもう私は放っておいても消えるよ。」
 

と付け加えた。
 

 

それがまた悲しくて視界がにじんでくる。
 

 

 

 

「マスター・・・」
 

 

 

ふいに口をついて言葉が出た。
 

マスターは無言でそれに耳をかたむける。
 

 

「私があの写真を羨ましいと思ったのは・・・二人の人がとても楽しそうに笑ってたからです・・・」
 

 

「・・・うん。」
 

 

 

「・・・もし私に友達がいたら、あと数刻で砕け散っても構わないと思っていたのですが・・・
 

 

 

結局、その友達の住む世界を守りたくて・・・

 

 

 

私はどちらも同じ選択をしたでしょう。」

 

 

 

それが白マルスの答えだった。

 

「分かった・・・」
 

 

そう言い、マスターは宝石を手渡した。
 

 

受け取った宝石から鼓動を感じて、ぽつりと呟く。
 

「貴方だって、望んでこんな力をもって生まれた訳ではないだろうに・・・」
 

 

悲しげに言う白マルスに、いてもたってもいられなくなったマスターが尋ねる。
 

「何か・・・私に言いたいことは・・・あるかい?」
 

 

 

悲痛な顔で申し訳なさそうにしているマスターに、白マルスはにっこりと微笑んだ。

 

 

 

「造ってくれて、ありがとうございます。」

 

 

罵られるものだと思っていたマスターは、逆にひっぱたかれたような顔をした。
 

そのまま暗い顔でボーッとしてるので、こう続けた。
 

 

「・・・一つわがままを言っていいのなら、心が壊れても・・・いつか、友達がほしいです。
 

もし暴走しても、壊してしまわないような友達が・・・」
 

  

するとマスターが少し救われたような表情になったので、白マルスも少し笑った後、
 

言われた通り宝石を服の中、肌に直に触れる場所まで動かし、服とローブの上から手でしっかりと掴む。

 

 

 

 

 

 

――けど、本当は分かってる・・・そんな都合のいい友達なんていくら待っても来ない・・・
 

 

        たとえ閉じこめられなくても、危険な上に心が壊れた人形<わたし>に好意を抱く者など居ないと――

 

 

「・・・ごめんね。」
 

マスターが懺悔と共に、私に手をかざす。

 

 

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 

 

 

私の意識、感情、記憶が砕けて闇に沈んでいく中、マスターの最期の言葉を聞いた気がした。

 

 

そ・・・・えば・・・キ・・名ま・・・まだ・・・・・・ご・・め・・・・ね・・・
 

 

わた・・・の・・・・犠・・い・・・・
 

 

・・・・・・・サクリ。
 

 

 

 

 

 ――――――――――

なっがい小説、お疲れ様でしたー。

ついでに説明をいくつか。

※タブーが造った魔竜の材料:影虫、クレイジーハンド。←

・・・というわけで二度と同じのは造れません\(^o^)/

※サクリの閉じこめられたでかい部屋は実は竜殿です。

けど魔竜暴れればぶっ壊れるよ!←

それと実はマスターのはからいにより魔竜より強い力があればすんなり扉開きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

                               *

 

 

 

 

月が雲で覆われ、月光が遮られた。

 

すると彼の頬を滴が伝い、言葉が紡がれる。

 

「私は・・・・・・・サクリ。・・・魔竜を封印するための入れ物・・・それ以上の価値はない・・・・」

 

彼の・・・

 

心だけでなく、記憶も壊れているという事に気づく者は誰も居ない。

 

彼の過去を知る者は、もう、一人として居ないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒ロイ「・・・え?僕は数には入りませんよ。(ニコッ)

     ついでに大変申し訳ありませんが、閃ryは勝手に記憶に関する能力の貴方なら何とかなるかもと踏んでますよ?

     ・・・ね、あの方の子の現竜王様。」